2012年8月27日月曜日

【展示】テマヒマ展


テマヒマ展へ行ってきました。とても美しい映像で紹介され、きちんと見栄えのするように置かれている美しい道具たち、きめ細かくつくられた特産品の数々。佐藤卓さんと、深澤直人さんの視点によって、作り上げられたとても美しい展示だったとおもいます。

静かで美しい音楽や、陽気で活きのいい音楽、それに合わせてつくられた映像が、ものに魂を込めている人たちの美しい姿を映し出しているようでした。

東北のものづくりには、合理性を追求してきた現代社会が忘れてしまいがちな「時間」の概念が、今もなお生き続けています。
-- 中略 --
東北の文化や精神を背景に生まれたものづくりから、今後のデザインに活かすべき知恵や工夫を探ります。
http://www.2121designsight.jp/program/temahima/


作り手の視点、というのを大切にしているのは、映像のモチーフを「手」で表現していた事からも伝わってきました。焦点を当てなければ見過ごしてしまうような作り手の存在、それを新たに発見するきっかけにもなるのではないかと思います。

ただ、個人的に残念だったのは、「使い手」の存在に関してのことでした。「用即美」。もともと使い手であったであろう、作り手の存在。用に即したもの作りというものには、むしろ今の作り手そのものではなくて、作り手に変わっていく使い手こそが求められるものなのではないかと思っています。プログラマー的に言えば、仕事のためにカスタマイズした、スプリクト達やディレクトリ構成みたいな感じですかね。

手で触って、使って、そして考える。そして少しずつ変えていく。ものづくりの可能性も大切ではありますが、むしろ「使う事」の可能性というのも無視できない大切な存在なのだと思うからです。「使う事」の感動からの距離は、たぶん展示品とお客さんの距離くらいにはあったのではないかなと、そんな気がしたのでした。このテーマだったらもっとこう、手に馴染むような感覚が欲しかったな、と思ったのでした。とはいえ、時間とかがかかるものだとは思うのでそれも難しいかとも。

なんか、文句ばかり書いているような感じではあるけど、展示はとても良かったです。不思議な静けさと、美しさがあった感じでした。あと、ブログがとても良さそうなので読みたいと思います。(http://www.2121designsight.jp/documents/exhibition/cat-2/

2012年8月26日日曜日

【書籍】藻谷浩介さん、経済成長が無ければ僕たちは幸せになれないのでしょうか?

お祭りへ行ってきました。お祭りに行くといつも感じるのですが、祭りをつくる人たちを動かす力があって、そしてその力とはまた違う力が働いて人々が集まってくる。そんな風に感じています。そのエネルギーの中にいると、人が生きて幸せを感じるという事は、決して経済だけでは語ることのできないと、そんなような気がします。

さて、地域の課題を地域に住む人たちが解決するためのコミュニティデザインに携わっている山崎亮さんと、地域経済を専門とされている日本総研の藻谷浩介さんという方の対談を書きおこした、
「藻谷浩介さん、経済成長が無ければ僕たちは幸せになれないのでしょうか?」
という本を買って読みました。対談本だったのでとても読みやすく、本を買って2時間ほどで読んでしまいました。


啓発系のブログでPVを稼ぐ為に書かれるようなタイトルを冠してはいますが、このタイトルはダグラス・スミスという政治学者の「経済成長が無ければ私たちは豊かになれないのだろうか」という本に由来しているそうです。(p16)

 最初はE・F・シューマッハーの「スモールイズ・ビューティフル」のような内容を想像したのですが、 - 経済成長なんて必要ないんだ! -  や - 人間の豊かさはコミュニケーションだ! - といったような極論に走る事無く、現実に地域で起きている状況と、経済学で出される数字や指標などを対比しつつ、それぞれをどのように見ていけば良いのかという所が丁寧に説明されていたと思います。むしろ”どうすべきか”という主張に関しては、少し距離を置いていました。それについては、内容を読み進めていくうちに明らかになってきます。

 前書きにも記述がありましたが、対談がもとになっているので、その場の空気や時間の関係によって、すべてが網羅されている訳ではないとのことです。その分、それぞれの立場の人たちへの興味を持つきっかけや、歩み寄りのきっかけになるような配慮がされているような気がしました。

 大学時代に山崎さんのされている家島のワークショップにゼミで参加した事があり、その地域に溢れるたくましさやエネルギーを実感していたので、話の内容がとてもスッと入ってきました。逆にその場で感じた事を、別の視点で冷静に補ってくれるような内容になっていたと思います。

 この本だけでは到底伝わりきる事のできないそのエネルギー。感じてみたいという人はぜひ紹介されている場所へ行ってみると良いとおもいます。自分も行った事が無い場所には、一度足を運んでみたくなりました。家島に関しては、もしかしたら今年のアイランダーにいけばすこし感じる事ができるかもしれません(http://www.i-lander.com/2011/index.html)、そして猛威とど読むとまた新たな視点を見つける事ができるような気がします。

 重複になりますが、とても簡単に読めると思うので、地域経済、まちづくりやコミュニティデザインに興味が或る人は、それぞれの事をバランス良く考えるきっかけになるのではないかと思います。個人的にはとても楽しんで読む事ができました。