2012年5月13日日曜日

【書籍】今和次郎「日本の民家」再訪

散歩をしていると、ふと街や家などといった環境の移り変わり痕跡を目の当たりにしてドキドキとする事があります。そういった痕跡は、常に人間の営みの変化を映し出す鏡として、たくさんの事を教え、そして想像させてくれます。
京成線高架下にあった「南米食堂」という看板。他に「・・パイプ」
「・・衡機製作所」という看板が残ったままになっていました。


瀝青会の今和次郎「日本の民家」再訪 を読みました。今和次郎もそういった人の営みの移ろいを、「建築」とくに「民家」という対象を通して書き残しておいたのが「日本の民家」というもののようです。当の書籍に関しては読んでいないので、はっきりとした事はわかりませんが、この「日本の民家」に今和次郎が書き残した当時の民家が今どうなっているのか、というのを確かめるのが、この書籍に通じる調査の発端だったと言う事だそうです。

私自身は建築に関して、ほとんど知識もないのですが、とても読み応えのある本だったと思います。建築のみでなく、調査にいたる移動や、実地での調査に至るまでの過程の話、それらがすべて人々の営みに通じるものがあるというのが伝わってきました。もちろん、調査した人のそれぞれの息づかいなども伝わってきます。

とても面白かったので、以前やっていた今和次郎展などに行かれた方など、興味を持っている方ならば、とても楽しく読めると思うものでした。

個人的には下記の引用がされている部分が印象的でした。

郊外に立つて、校外の美しいプランニングと云ふことを念頭に置いて見廻すと、一等醜く思はれるものは都会から吐き出されたやうな不具な住宅その他が散乱してゐることである。
....
 「Ⅲ 間取りに就いて、処女郊外地への同情」 『日本の民家』初版 103頁
今和次郎「日本の民家」再訪 47頁

いろいろと考えを巡らせながら、電車からの景色を楽しめそうな気がします。